様々なゲート方式
ゲートの役割
ゲートは成形品に樹脂(プラスチック)が流れこむ入り口です。
また、ただ単に 「成形品の入り口」 である以外に、さまざまな役割を持っています。
・樹脂の流入速度の制御
樹脂が成形品へ流入するときの速度や方向を制御します。
・ゲートのシール
樹脂流入完了後にゲート部が先に固化することで、「樹脂の逆流防止」・「圧力の調整」を行います。
・樹脂温度のコントロール
樹脂が狭いゲートを抜けるときの摩擦熱により発熱させることができます。
・成形品との切断
ゲート部は細くなっており、成形品との切断を容易にします。
このようにゲートは、重要な役割を持っています。
ゲートの設計
ゲートは製品として不要ですので成形後に切断されることとなります。
従って出来るだけ目立たず小さく設計して、製品の外観を損なわないようにする必要があります。
しかし、大きな成形品では、ゲートの大きさを大きくしなければ樹脂の充填途中でゲート部が固化してしまい、充填不良等の成形不要に繋がることがあります。従って、成形品によって適切なゲート設計が必要となってきます。
制限ゲートと非制限ゲート
ゲートは 「制限ゲート」と「非制限ゲート」に分けることができます。
制限ゲートは、成形品への流入口を狭くして、樹脂の流れを制御するタイプのゲート方式となります。
一方、非制限ゲートはゲートを介さず直接成形品へ樹脂を流入させるゲート方式となります。非制限ゲートはダイレクトゲートとも呼ばれます。
制限ゲート
入り口を狭くする制限ゲートには、さまざまな特徴を持つゲートタイプが存在します。
成形品の仕様(形状、樹脂の種類、大きさ等)によってゲートタイプを選択します。通常は旧タイプの製品や類似製品で採用したゲートタイプを選択します。
サイドゲート
成形品の横に配置するゲート方式です。
<特徴>
・複数の成形品を一つの金型で成形する際に最もよく利用される標準的なげゲート方式です。
・ダイレクトゲートと同様にゲート跡が残るため、ゲートカット後の仕上げが必要となります。
・ゲートの大きさは大きく設定できるため、成形圧力は比較的かかりやすくなります。
フイルムゲート
成形品にそって配置する薄いフィルム状のゲート方式です。
<特徴>
・肉厚が薄く、成形品の幅が広いものに適したゲート方式です。
・成形品の幅だけランナーを付け、成形品とランナー間をフイルム状のゲートで接続します。
・金型から取り出された成形品にはゲートが残っているので、ゲートカットの処理が必要になります。
ピンゲート
3プレート金型で採用されるゲート方式であり、1つの金型で複数の成形品を成形する多数個取りの金型に適しています。以下の動画は3プレートの金型動作です。3プレート金型では金型が3分割されます。はじめの分割動作でピンゲートを含むスプールやランナーが金型から取り出され、次の分割動作で成形品が取り出されます。
<特徴>
・ゲートが小さいため(通常1mm前後)、流動性の悪い樹脂を使うと充填不足やひけといった成形不良に繋がります。
・ゲートは金型が開く際に自動的に切断されるので、成形品取り出し後のゲートカットが不要です。
サブマリンゲート
別名トンネルゲートとも呼ばれ、金型にトンネル状のゲートを配置します。
開閉時に成形品とゲートを自動切断する構造のゲート方式として多用されています。
<特徴>
・金型が開いた際にゲートが自動で切断されるため、成形後のゲートカット処理が不要となります。
・流動性が悪い樹脂やガラス強化材が添加された樹脂などは使用に適していません。
バナナゲート
サブマリンゲートと同じ金型構造となり、ゲート部がバナナ状に湾曲した形状となります。
サブマリンゲートと共にこのゲート方式の金型構造は画像で理解するのは困難です。
以下の動画では、バナナゲートタイプの成形品が金型から取り出される様子を示しています。
非制限ゲート
非制限ゲートは直接成形品に樹脂を流入させます。ダイレクトゲートと呼ばれます。
ダイレクトゲート
ダイレクトゲートはランナーを介さず直接成形品にスプールから接続するゲート方式です。以下の特徴があります。
<特徴>
・成形圧力がかかりやすく、大きな成形品や肉厚な成形品に適しています。
・ゲート跡が大きく残るため、ゲートカット後の仕上げが必要となります。
・できるだけ製品面として隠れる部分にゲート位置を持ってくるようにします。
以上、成形品で使われる主なゲートタイプについて解説しました。
これらのゲートタイプの特徴をよく理解した上で、目的や形状に応じてゲートタイプを使い分けます。また金型業者とよく打ち合わせを行い、過去の類似製品などを参考にしてゲートタイプを決めるのが良いでしょう。
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