成形収縮とプラスチックの収縮率
成形収縮とは
成形収縮とは、金型に注入した樹脂が冷却されたあとに体積が縮むことです。
樹脂は溶融した状態から固化した際に体積が減少します。
体積が減少して縮んだ比率のことを「収縮率」といいます。
例えば、ABSという樹脂の収縮率は 4/1000 から 9/1000 です。
1000mmの全長のものが、4mm から 9mm 縮むということです。
収縮率=((収縮前の長さ)ー(収縮後の長さ))/(収縮前の長さ)
収縮前の長さ=金型寸法
収縮後の長さ=成形品の常温における寸法
従って、金型は実際の狙う寸法より大きく製作する必要があります。
例えば、収縮率を 4/1000 の樹脂を使った成形品で、100mmのサイズを狙う場合、
100mm×1.004=100.4 となり、金型寸法は 100.4 mm にする必要があります。
金型寸法を決める際の注意点
実際の成形で予想以上に収縮したり、逆に収縮しなかったりします。
この場合、成形条件である程度収縮率をコントロールすることができます。しかし、成形条件による寸法コントロールは限界があります。そこで狙った寸法にならなかった場合、金型を修正しなければなりません。
金型は金属であるため削るのは簡単です。しかし、肉を盛るのは困難です。
従って、削りの方向で金型寸法を調整できるように、
・キャビティー(凹)の場合は小さな値の収縮率
・コア(凸)の場合は大きな値の収縮率
を設定しておきます。
もし、狙った寸法が得られなかった場合は、金型を少しずつ削って調整することができます。
寸法精度を要求する部分についてはこのように対応すると良いでしょう。
なお、収縮率は同じ材質、同じ金型であっても部位によって縮み方が異なってくる場合がありますので注意が必要です。
プラスチックの収縮率
射出成形で使用されるプラスチック(樹脂)は、
・結晶性樹脂
・非晶性樹脂
に分かれます。
原子や分子が規則正しく配列した状態を 「結晶」といい、プラスチックは多少なりとも結晶性をもっています。結晶性樹脂の収縮率は大きいといった特徴があります。10/1000を超えるものは結晶性樹脂となります。
結晶性樹脂
略号 | 樹脂名 | 収縮率 (%) |
---|---|---|
PP | ポリプロピレン | 10/1000 〜 25/1000 |
EVA | エチレン酢酸ビニル | 7/1000 〜 12/1000 |
HDPE | 高密度ポリエチレン | 20/1000 〜 60/1000 |
POM | ポリアセタール | 20/1000 〜 25/1000 |
PBT | ポリブチレンテレフタレート | 15/1000 〜 20/1000 |
PET | ポリエチレンテレフタレート | 2/1000 〜 4/1000 |
PPS | ポリフェニレンサルファイド | 6/1000 〜 8/1000 |
PA6 | ポリアミド(ナイロン6) | 5/1000 〜 15/1000 |
PA66 | ポリアミド(ナイロン66) | 8/1000 〜 15/1000 |
PEEK | ポリエーテルエーテルケトン | 7/1000 〜 19/1000 |
非晶性樹脂
略号 | 樹脂名 | 収縮率 (%) |
---|---|---|
ABS | ABS樹脂(アクリロニトリル ブタジエン スチレン樹脂) | 4/1000 〜 9/1000 |
PS | ポリスチレン | 4/1000 〜 7/1000 |
AS | アクリロニトリルスチレン | 2/1000 〜 7/1000 |
PC | ポリカーボネート | 5/1000 〜 7/1000 |
PVC | 塩化ビニール(硬化) | 1/1000 〜 5/1000 |
PMMA | メタクリル酸メチルエステル(アクリル) | 1/1000 〜 4/1000 |
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