各プラスチックの特徴
セルロイド
歴史上初めて工業化されたプラスチックはセルロイドです。セルロイドはそれまで高価な象牙で作られていたビリヤードボールの安価な代用品として誕生しました。セルロースを硝酸・硫酸の混合液(混酸)で処理して生成したニトロセルロースに樟脳を混合し、加熱して型に流し込み成形して製造します。
セルロイドの欠点は燃えやすいことです。映画のフィルムなどに使われていましたが、燃えて火災になることもしばしばありました。こうして火災が多発するようになって安全性が問題となり、セルロイド製品はやがて使われなくなりました。昔はおもちゃというとセルロイド製品が主流でしたが、次第に安全な他のプラスチックにとって代わられました。現在ではピンポン玉の製造にだけ使われています。
ポリエチレン
石油から採れたエチレンを付加重合させて作ったものがポリエチレンです。その構造は基本となるメチレン基(−CH2−)が鎖状に連なった形をしており、プラスチックの中でも最も簡単な構造です。
ポリエチレンの鎖はところどころに枝分かれが生じ、その枝分かれが少ないと隣同士の分子の距離が近くなって高密度になります。逆に枝分かれが多いと分子間の隙間が大きくなり、低密度になります。前者を高密度ポリエチレン、後者を低密度ポリエチレンといいます。低密度ポリエチレンは高密度ポリエチレンより柔らかいという性質を持っています。
スーパーのレジ袋はこのポリエチレンか次に説明するポリプロピレンを薄くシート状にしたものです。ポリエチレンは結晶性なので光が通り抜けにくく、一般に不透明です。ただ、低密度ポリエチレンは鎖状の部分が不規則になりやすく、透明度が高くなります。
また、そのほかの用途として、ポリエチレン管があります。以前の下水道管は金属製でしたが、地震発生時に管の破損がしばしば問題となっておりました。ポリエチレン管は柔軟性に優れ、地震が発生しても破損しにくい材質です。
ポリプロピレン
単体のプロピレンが重合したポリマーです。ポリプロピレンはポリエチレンの一つおきの炭素を水素原子の代わりにメチル基(−CH3)で置き換えたものです。ポリエチレンと並んで最もよく使用されているプラスチックです。ポリプロピレンは、製造コストが安い、耐熱性が比較的高い、密度が0.90〜0.91と比較的低く、軽いといった特長があります。
ポリプロピレンは非常に広範囲に利用されています。自動車のバンパーを始め、家電製品の筐体、おもちゃ、日用品、雑貨など日常生活のありとあらゆる場面でよく見かけます。
ポリプロピレンの詳細はこちらから
ポリスチレン
単体のスチレンが重合したポリマーです。ポリスチレンはポリプロピレンのメチル基の代わりにベンゼン環(−C6H5)を置き換えたものです。ポリスチレンのベンゼン環の分子中での並び方は、ベンゼン環が比較的大きいので不規則になります。並び方が不規則だと、分子中でベンゼン環の位置が均一になり、光が通り抜けやすくなるので透明性が増します。このようなものを非晶性といいます。
ポリスチレンは透明で着色が容易なため、CD やDVDのケース、プリンなどの食品容器として幅広く利用されています。
ポリスチレンの応用として最もよく使われているのが、発泡ポリエチレンです。発泡スチロールとして一般に知られています。断熱性や耐水性に優れているため、食品の梱包に使われています。また、衝撃吸収性も強く、電気製品の梱包・緩衝材に使われています。
ポリ塩化ビニル
ポリプロピレンのメチル基を塩素原子に変えたもので、熱可塑性プラスチックです。難燃性で絶縁性に優れているところから電線の被覆材として使われています。
塩化ビニルに可塑剤を加えると添加量により柔らかさが大きく変化します。硬質塩化ビニルはこの可塑剤の量が少なく、硬い塩化ビニルのことをいいます。雨どいや水道管などの灰色の管は硬質塩化ビニル製です。
可塑剤の量が多いものは、ゴムのような柔らかく弾力性のある軟質塩化ビニルになります。軟質塩化ビニルは発泡材を加えてふくらませ、クッション材などに使われています。
ポリメタクリル酸メチル(アクリルガラス)
プラスチックの中で最も透明度が高い素材で、レンズなどによく使われます。また、ガラスよりも耐衝撃性が高く、成形も容易なので家具などの透明な部分の素材として使われています。非常に厚みのある板を特殊な機械で成形したものは、水族館の大型水槽に使われています。
ポリテトラフルオロエチレン
ポリエチレンについている水素原子をすべてフッ素原子に置き換えたもので、炭素原子とフッ素原子の間の結合力がとても大きいので、強力な耐薬品性、高い難燃性を有します。フライパンのコーティングに広く使われています。摩擦係数が低いのでフライパンが焦げ付きにくくなっています。
ポリカーボネート
ビスフェノールAとホスゲンとから界面縮合により重合させて製造します。極めて高い耐衝撃性を有しており、ガラスの約200倍、アクリルの30倍以上と言われています。
このため、バイク用のヘルメットの風防や機動隊が使う透明な盾としての応用があります。また透明性が高いのでCDやDVD の基板や屋外にある透明屋根としての用途もあります。
ポリエチレンテレフタレート(PET)
テレフタル酸とエチレングリコールの縮合重合によって製造します。結晶性を持ち、熱可塑性プラスチックの一種です。耐熱性、耐薬品性を活かして食品包装材として幅広く使用されています。特に軽量、耐衝撃性に優れ、清潔なイメージを与えることからPETボトルとして飲料の容器に使用されています。
PETボトルは流通量が多く、単一組成で回収しやすいので、リサイクルの仕組みが発達しています。コンビニ、スーパー、自治体などには、PETボトル用の改修ボックスが設置されています。マテリアルリサイクルという仕組みでPETの成形材料として再利用されます。
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