プラスチックと環境問題
プラスチックには軽い、錆びない、腐らないなどいろいろな長所があります。しかし一方、廃棄されたときに腐らないとゴミが集積し、自然界では問題になります。
木の葉は地面に落ちるとバクテリアの働きで腐り土に返るので環境問題は生じません。しかし、プラスチックは腐らないので土に埋めても分解されず環境問題となります。
プラスチックは炭素と水素が主体の化合物なので燃えます。しかし、プラスチックの原料である石油は化石燃料なので、燃えた後に生じる二酸化炭素が大気中に増加することによって地球温暖化の原因となります。
このように便利なプラスチックなのに、使い終わったときのことを考えて設計しなければならない時代が来ているのです。
プラスチックの安全性
プラスチックは化学的に安定な物質であり、通常は私たちの健康に有害な物質を含みません。しかし、製造過程で十分な安全対策が取られていないと有害な物質を生じ、健康に悪影響を与えることがあります。例えば、製造過程で化学反応が不十分だと、プラスチック製品に有害な物質が残留し、製品を使っているうちに浸み出してきて健康に害を与えることがあります。過去にはユリア樹脂でできた食器から原料のビスフェノールAが検出された問題がありました。また、多くのプラスチックには添加剤が加えられていますが、添加剤の中には有害な物質も数多くあります。
プラスチックを本来の目的以外の用途に使ったり、長時間使用したり、定められた条件を超える温度や圧力のもとで使ったりした場合には、有害物質が出てくるおそれがあります。家庭用品品質表示法では、使い方や注意事項を消費者が分かるように記載することを義務づけています。
環境問題
木材や金属は自然界に長く放置しておくと腐ったり錆びたりします。ところがプラスチックは化学的に安定な物質のため、自然の中に放置しておいても分解されません。プラスチックは炭素と水素から成る有機物ですが、これを分解する微生物が自然界に存在せず、微生物の働きによって分解されることはありません。
プラスチックには、燃やすと有毒ガスを発生するものがあります。環境汚染の例としてダイオキシンの発生が問題となっています。ダイオキシンは、塩素化合物とベンゼン環を持つ物質が低温で燃えると発生します。現在ではゴミの分別が進んだことやダイオキシンの発生を抑える消去黒が開発されたことにより、以前ほど騒がれなくなりました。
近年環境ホルモンの問題が注目されています。生体内のホルモンと構造の似た物質が体内に取り込まれると、ホルモンと同様の働きをして生体に影響を及ぼします。このような物質を環境ホルモンといいます。環境ホルモンと考えられている物質にはフタル酸エステル類やビスフェノールAがあります。ダイオキシンも環境ホルモンの一種です。
資源問題
プラスチックは原油を精製した「ナフサ」(粗製ガソリン)から作られます。ナフサを加熱分解することによりエチレンやプロピレンのような原料を生成し、これを重合することによりプラスチックを製造します。
石油は有限の資源と言われて久しいですが、現在の埋蔵量の推定値からあと50年程度は持つと予測されています。2009年の石油確認埋蔵量1兆3542億バレルで、これを1日あたりの生産量は7,050万バレル、年間257億バレルで割った値は約53年となります。
日本では原油の約6%がプラスチック製品になります。ポリエチレンから作られるレジ袋は年間約300億枚ですが、これは原油に換算すると約55万キロリットルとなります。
今後は石油の無駄をなくし、貴重な資源をなるべく長く使って行くことが重要です。現代社会は石油で成り立っていると言っても過言ではありませんが、石油の埋蔵量に余裕があるうちに、石油に代わる化学製品の開発を進めていく必要があります。
ゴミ問題
2009年の日本のプラスチックの年間生産量は約1,121万トン、年間消費量は約843万トンでした。一方、廃棄物として排出されている廃プラスチックの量は、ほぼ年間消費量に近い値となっています。
ダイオキシン対策が進み、高温に耐えられる焼却炉が各地に建造されてきて、プラスチックの焼却も可能になってきました。ゴミの再利用、再資源化も進んでいます。しかし、まだ多くのプラスチックが最終処分場に埋め立てられています。
プラスチックは炭素と水素が主体の化合物なので燃えると二酸化炭素と水になります。石油を原料とするプラスチックが燃えて生じる二酸化炭素は、地球温暖化の原因になると考えられています。
いろいろな製品が安価に作れて便利なプラスチックではあるものの、廃棄処理のことも考えて製品を設計しなければならない時代に来ていると言えます。
ゴミ問題に対する活動としては3つの英語の頭文字Rに基づいた3R活動があります。最近ではこれに4番目のRを加えた4R活動が提唱されています。
Refuse
必要のないものは受け取らない。ゴミになりそうなものはなるべく買わない。スーパーで買い物袋を持参してレジ袋を断るのがこの活動です。レジ袋は有料化するスーパーも増えてきました。
Reduce
ゴミの発生を抑制し、ゴミの量を減らす。使い捨ての商品を買わずに詰め替え商品を買うなどです。カップめんのカップもプラスチック製から紙製に置き換わってきています。飲料用のPETボトルを肉薄のものに変えて、飲んだ後にクシャクシャに小さく折りたたんで捨てられるようにしたものも現れました。肉薄にすることによってゴミの量を減らすことに役だっています。
Reuse
PETボトルを回収し、瓶のように洗浄して繰り返し使用することです。家電製品や家具類の中古品販売も盛んになってきています。
Recycle
これが現在では最も進んでいるでしょう。廃棄されたゴミの中から有用な素材を取り出し、物理的、化学的な処理を加えて新たな製品を作り出すことです。
1995年に容器包装リサイクル法が制定されてからは一気にPETボトルの回収率が高まり、2009年には約78%のPETボトルが改修されるようになりました。
リサイクルを効率よく進めるためには資源ゴミとしてきちんと分別回収することが肝要です。
@ マテリアルリサイクル
一般的にリサイクルと呼ばれている方法で、廃プラスチックを融かしてそのままプラスチック製品の原料として使います。PETボトルを融かして公園のベンチにするなどです。
A ケミカルリサイクル
廃プラスチックに熱や圧力を加えて化学的な処理を施し、モノマーなどの原料物質にいったん戻してから新たにプラスチックを合成します。PETボトルの場合、モノマーのテレフタル酸に戻し、再びPETの原料とします。ただコスト面での課題が残ります。
B サーマルリサイクル
廃プラスチックを燃やして熱エネルギーとして回収します。主に炭素原子と水素原子とからできているプラスチックは燃やしたときに発熱量が大きいため、焼却炉を発電や冷暖房に利用できます。また廃プラスチックを固めて固形燃料とすることもできます。
バイオプラスチック
現在のプラスチックは、基本的に石油から採れるナフサを原料としています。しかし、石油資源には限りがあり、地球上に残されている石油はあと50年程度と言われています。いずれ人類は石油に代わる新しい資源を見つけなければなりません。
そこで、石油以外のものからプラスチックを製造する研究が進められています。現在進められているのは植物由来の原料から作られるバイオマスプラスチックです。バイオマスプラスチックも処分すると二酸化炭素を生じるのですが、それは元々植物が大気中から取り込んで固定化したものですので、排出しても大気に返すことになり、二酸化炭素の排出量は増加しないことになります。この考え方をカーボンニュートラルといいます。バイオマスプラスチックの代表例はポリ乳酸です。また、サトウキビ由来のポリエチレンも実用化が計画されています。
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