プラスチックとは
プラスチック(Plastic)の英語の意味は「可塑」であり、熱を加えると柔らかくなることを表します。これに加えて現在では「容易に成形加工ができる」という意味が付け加わっています。
今まで金属で作られていた製品の多くがプラスチックに置き換えられています。例えば、私たちの最も身近な自動車のプラスチックの比率は、1980年 4.7%、2001年 8.2% そして2025年には18%まで達する可能性があるとされています。
このような背景から機械設計者のプラスチックの設計に関わる頻度がますます増えてくるものと予測されます。
プラスチック化が進んできた理由は、プラスチックが金属より優れている点が多いからです。金属と比べたプラスチックの利点は次に示すとおりです。
- 成形加工のしやすさ
- 金属に比べて軽いこと(使用時も運搬時も)
- 添加が容易(着色剤、耐候剤、抗菌剤)
プラスチックは石油から作られる
ここからは少しだけ化学的なお話になりますが、機械設計においてプラスチック材料を選択する際に知っておくとより理解が深まりますのでお読みください。
まずプラスチックは石油から作られる物質であることは、知っていることと思います。油田から採れた原油を石油精製工場で分留することにより、ガソリンやナフサ、灯油、軽油、重油などの成分に分離させます。分離された成分のうち、プラスチックの原料になるのは「ナフサ」です。ナフサに熱を加えるといろいろな物質に分解し、エチレン、プロピレン、ベンゼンなどが生成します。これらからプラスチックの原料となる「モノマー」が作られます。
モノマーを重合してポリマーを作る
ナフサを原料として作られたモノマーを化学的な反応により重合させて「ポリマー(高分子化合物)」に変化させます。ポリマーはモノマーが複数個結合してできた物質です。「モノ」は1を表すギリシャ語の接頭辞で、「ポリ」は たくさん を表すギリシャ語の接頭辞です。一つ一つバラバラだったモノマーの分子がたくさんつながって長いポリマー分子になるというイメージです。
通常ポリマーはモノマーが鎖状につながった構造をしています。例えば、モノマーであるエチレンが重合反応によって「ポリエチレン」というポリマーになります。ポリエチレンはプラスチックの中でも最も簡単な構造をしていて、炭素の鎖を構成する炭素原子に2個の水素原子が付いている構造になっています。
ポリエチレンのようにモノマーの名前の先頭に「ポリ」を付けてポリマーの名前を付けます。従って、プラスチックの種類には、「ポリエチレン」、「ポリプロピレン」、「ポリカボネート」のようにポリがついているものが多いです。
プラスチックの成形加工
プラスチックの元々の意味は可塑性ということですが、これは熱を加えると柔らかくなり、流動性が増すところから来ています。この柔らかいプラスチックを好みの形に成形するには、金属で金型を作り、その型に柔らかくなったプラスチックを流し込んで冷却します。
成形した後で、製品として不要な形状(バリやゲートなど)を取り除いたり、色を付けたりする二次加工をしてプラスチック製品として出荷します。
プラスチックの成型加工が容易である理由の一つに、作業するときの温度が重要な役割を果たしています。プラスチックの軟化温度は100〜200℃で、人間にとって作業がしやすい温度です。射出成形では200〜300℃のシリンダー内にプラスチックのペレット(円筒状の小さな粒)を投入し、融かして金型に押し出し、30〜90℃に冷却して固めます。この温度範囲が人間にとって制御しやすいことかが、プラスチックの加工のしやすさに大きな影響を与えています。
今日私たちの身の回りでプラスチックの製品がこんなにも多く出回っている理由は、このプラスチックの加工のしやすさにあると言ってもいいでしょう。
熱硬化性と熱可塑性
すべてのプラスチックが必ずしも熱を加えると柔らかくなるわけではありません。中には熱を加えても柔らかくならず、さらに高温に加熱すると焦げてしまうものもあります。このようなプラスチックを「熱硬化性プラスチック」といいます。
熱硬化性プラスチック = 熱を加えると硬化する(硬くなる)プラスチック
熱を加えても柔らかくならないので、成形加工するときは、モノマーに近い流動性の大きい物質に硬化剤を混ぜて型に入れ、加熱すると重合反応が起こって固まり、製品になります。
熱硬化性プラスチックは三次元の網状の構造をしているため、熱を加えても分子間力でガッチリ固定されていて流れにくいのです。このような三次元構造を作成することを「架橋反応」といいます。
熱硬化性プラスチックには、「フェノール樹脂」、「エポキシ」、「ポリエステル」などがあります。
そして、熱を再び加えても軟化しないという特徴を活かし、熱が加わるような部品(例えば自動車の金属代替部品など)に利用されています。
熱硬化性プラスチックに対して、熱を加えると流動性が増すものを「熱可塑性プラスチック」といいます。こちらのほうがプラスチックの本来の意味に近いかもしれません。熱可塑性プラスチックは、一度固化したものを再び加熱溶融すれば再成形が可能です。この融通性の高さが熱可塑性プラスチックの特長です。熱可塑性プラスチックには、「ポリエチレン」、「ポリプロピレン」、「ポリ塩化ビニル」などがあります。洗面器やバケツなどの日用品や家電製品のカバーなど幅広く利用されています。
ちょっと化学のお話、興味があればお読みください!
付加重合と縮合重合について
モノマーの重合方法に大きく分けて2通りあります。その一つは二重結合を持ったモノマーを重合させる付加重合です。二重結合は炭素原子が2本の手で互いに結び付いているもので、重合するとこのうち1本の手が切れて隣のモノマーの炭素原子と結び付きます。こうして巨大な分子となったものがポリマーです。付加重合により作られるプラスチックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどがあります。
もう一つの方法は、カルボン酸やアルコール、アミンなど官能基を持ったモノマー2つの分子から水分子が取れて結合する縮合反応によって重合する縮合重合です。例えば、カルボン酸とアルコールの縮合反応によって生じるエステル結合によって分子鎖がつながるとポリエステルが生成します。また、カルボン酸とアミンとの縮合反応によって生じるアミド結合によって分子鎖がつながるとポリアミドが生成します。どちらの場合も重合するためにはモノマー内に2つ以上の官能基を持っていることが必要です。
ポリエステルの例としては、テレフタル酸(カルボン酸)とエチレングリコール(アルコール)を重合したポリエチレンテレフタレート(PET)があります。ポリアミドの例としては、アジピン酸(カルボン酸)とヘキサメチレンジアミン(アミン)を重合した6,6−ナイロンがあります。ナイロンのアミド結合は、天然のタンパク質に見られるペプチド結合と類似しているため、性質が絹のような光沢を持っていて「空気と水と石油から作られ、鋼鉄のように強く絹のような肌触り」という宣伝文句が使われました。
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