モデルの準備と形状の簡素化
CAE解析で用いるモデルの準備と形状の簡素化について説明します。
CAE解析を行うには、モデル(形状)が必要となります。3次元CADの普及により、モデルは3次元CADで作成するのが一般的となっております。
3次元CADでモデルを作成するメリットは、フレキシブルに形状を変更できることです。解析の結果が思わしくない場合、形状変更などの対策が直ぐに行うことができ、そのまま設計データとして利用できます。
しかし、設計データは製品を忠実に表現しているため、解析モデルとしてそのまま利用するには不適切です。解析モデルとして利用する場合、不要な形状を除外する必要があります。
例えば、「小さな穴」、「コーナーR」、「面取り」、「マーク」などです。
※ コーナーRとは丸まった角のこと
※ 面取りとは、斜めに削られた角部のこと
これらの形状は、解析において一般的に不要であるため除外します。
ただし、解析の目的によっては除外できないことがあるため注意が必要となります。
例えば、応力解析です。
応力解析では、細部に応力が集中することがしばしばあるため、細部を除外すると正しい解を得ることができません。応力集中部の形状は正しく忠実に表現する必要があります。
つまり、解析評価目的によって、形状の除外方法が変わってくるということです。
形状の除外方法の技術(スキル) を身につけるには、ある程度の経験値が必要です。実務で経験しながら、「 ここは除外しても問題ないな 」 ということが判ってきます。
モデルの簡素化
バルブのボディの応力解析を題材にして、形状の簡素化方法を説明します。
この題材で実施する解析は、バルブ内部に 水の圧力(水圧) がかかったときに発生する「応力」です。
どこに応力が集中するのか予測できない場合、細かい形状を全て除外します。既に応力集中がわかっている箇所 や 応力が集中しそうな箇所は除外せずに残します。
まず、細かい形状である、「小さな穴」、「コーナーR」、「面取り」、「マーク」を除外します。
次に、このモデルは左右と前後が対称形状となるため、1/4カットモデルにします。
形状が対称形状であり、かつ、水圧が内部に均等にかかるため、1/4にすることができます。
モデルの対称性を考慮することで、解析精度を維持した状態で、解析時間を大幅に削減することが可能となります。
これが通水中ではなく、弁が閉じている場合は均等に水圧がかからないため、1/4にすることができません。形状とかかる荷重が同じであることが対称性を利用できる前提となります。
コーナーRの除外について
モデルのコーナー部には、応力集中することがしばしばあります。
※応力集中の基本を知らない方は、先に 「応力集中による破壊」 をご覧下さい。
例えば、次の形状です。
荷重をかけるとコーナー部に応力が集中します。応力が集中するのは凹部のコーナーのみです。 凸部のコーナーはRの有無に影響しません。(※形状によっては応力が集中する場合もありますが、Rによる影響は受けません)
従って、凹部のコーナーRを除外する場合は、細心の注意をはらいます。
サンブナンの原理
サンブナンの原理を利用してモデルの簡素化が可能となります。
サンブナンの原理とは、「荷重点から十分に遠く離れた領域では弾性体に生じる応力は同一になるという」 原理のことです。
上図の2つのケースにおいて、穴の有無に関わらず、コーナー部の応力は同じになります。なぜなら穴とコーナー部は十分に離れた位置関係にあるからです。
この原理を利用して、評価と関係のない形状を除外することが可能となります。
「CAE解析を使いこなせない。。。」
「正しく解析条件の設定を行うことができない。。」
「解析で得られた応力の意味が理解できていない。。」
「出てきた値が本当に正しいのか分からない!」
「主応力、ミーゼス応力? どのように使い分けるの?」
という声をよく聴きます。
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