3DCADを使うメリット
3次元CADを使うとさまざまなメリットが得られます。2D-CADは、手書きで行っていた作業をコンピューターに置き換えたソフトです。しかし、3D-CADは単に3Dモデルをコンピュータで作るためのソフトにとどまらず、さまざまなメリットがあります。以下に、3D-CADの主なメリットについて説明します。
視覚的に分かりやすい
2D-CADで作られた図面は、投影図から立体を想像する必要があり読図能力を必要とします。読図能力は、その字の通り、 「図面を読む能力」です。
図面は 「三角法」 というルールに基づき描かれています。簡単な図面であれば理解できたとしても、複雑な図面を理解するには経験が必要です。たとえ設計者であっても、初めて見る図面であれば理解するために時間がかかるものです。
しかし、3D-CADは、誰が見ても一目瞭然です。実体そのものだからです。また、3D-CADは画面内で形状を回転させ、あらゆる方向から形状を確認できるという点で非常にメリットがあります。
図面は、設計者だけが使うものではありません。製品化する過程において、営業、生産、購買、仕入先など、図面の専門知識がない関係者が見ることになります。
3D-CADデータがあれば、専門知識がない方でも容易に形状を把握でき、コミニュケーションが図りやすくなります。良い製品を開発するためには、コミュニケーションの質を向上させることが非常に重要です。3D-CADをうまく活用して、お客様や社内の関連部門とのコミュニケーションをとってより良い製品を開発して頂きたいと思います。
体積・表面積・質量・重心等の情報が得られる
2D-CADでこれらの情報を得るためには、時間をかけて計算しなければなりません。私が設計者として仕事をはじめた頃は、2Dの図面から体積を予想するための計算を良くしていました。
正直、めんどくさくとても時間がかかります。図面をいくつかの単純なパーツに分解して計算します。当然、正確性に乏しく、時には計算ミスが発生します。
設計の過程でこれらの幾何情報(きかじょうほう)は頻繁に使います。 例えば、体積の場合、製品の材料費の算出に使います。新製品開発では目標となるコストがあります。目標コスト内で設計する必要があります。形状の試行錯誤は何度も発生するため、その度に体積を計算するのは非常にたいへんな作業です。
プラスチック製品であれば生産するための射出成形機の大きさに影響します。部品の大きさによっては、生産する設備が変わる可能性があります。設備が変わればコストに影響します。
自動車や機械設備など、振動を受ける製品では重心位置が重要となります。重心位置が高いと振動を受けやすくなります。
設計の初期段階では、このように様々な視点から設計検討が必要となります。3D-CADを使って、これらの幾何情報が簡単に得られることができるようになったのは大きなメリットです。
ボタンひとつで全ての幾何情報が瞬時に計算できます。
部品を組み付けた後の干渉チェックや解析などが行える
隣接する部品がぶつかり合わないか確認したり、部品に力を加えて壊れたりしないか確認することができます。
これは、3D-CADを使った設計の大きな変革です。2D-CADで設計していた頃は、試作品(プロトタイプ)が完成したのちに部品を組み立ててみると、「あれ、部品が入らない?」といったミスが発生することは良くあることでした。
つまり3D-CADの活用によって、試作品の完成後に確認していたことを、完成前に確認することができるようになったということです。
3D-CADで設計するようになると、このような致命的なミスを低減することができるため、設計スピードを上げることができるのです。
以上のように、設計の初期工程で品質検討作業を前倒しにして、初期段階から設計品質を高めることを「フロントローディング」といいます。
(フロント=初期 ローディング=負荷 → 初期に負荷を上げる)
フロントローディングのメリットは、開発コストの削減です。
設計の初期段階で発生する設計変更はかかるコストが少なく、それに対応する時間もあまり必要としません。
しかし、開発の終盤で発生する設計変更はコストも時間も大きくなります。なぜなら、変更が必要となる対象物が設計図面だけでなく、関連する技術資料、生産設備など影響範囲が拡大するからです。
従って、いかに設計の初期段階で設計の完成度を高めることができるかが、開発をスムーズに進める鍵となってきます。
複雑な形状や曲面などのデザインの設計が行い易い
近年、自動車、家電製品、日用品に至るまで、デザインの付加価値が消費者に求められる時代にあります。デザインの必要性があまりないと感じられる工業製品においてもデザインの良い製品が増えてきています。
例えば、建築等で利用される工具は機能が最重要でありますが、曲面を取り入れたデザインの製品が多く販売されています。これは、デザイナーに依頼しなくても、設計者が3D-CADで自由な曲面を使った設計ができるようになったことが一つの要因だと推測されます。
試作品が容易に作成できる
3D-CADにより試作品の製作の方法が大きく変化しました。従来、試作品を作る場合において、試作業者がメーカーから出された図面を読み取り、旋盤やフライス盤等の工作機械を使って製作していました。
試作業者は、試作品を製作するために以下の工程が必要でした。
1.図面を読み取る
2.加工方法を検討する
3.必要に応じて加工データを作成する
4.加工する
一方、3Dデータを使った試作品製作は、上記の1から3が省略できます。
3D-CADから出力したデータ(STLデータ)を様々な方式の造型機(光造形、粉末造形、シート積層等)で短期間に製作が可能となります。
最近では家庭でも使えるような造型機(3Dプリンターと呼ばれている)も普及してきており、3Dデータさえあれば誰でも簡単に試作品を作ることができる時代となってきています。
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