CADの心臓カーネルとは
「カーネル」とは3D形状を表現するためのコアとなる部分、言わば 「3次元CADソフトの心臓」 です。(パソコンで言えばOSに相当)
CADは何百種類というソフトウェアがあり、会社ごとに使用されるCADは異なっているケース多いです。
3D-CADデータは社外との受け渡しが多く発生します。
なぜなら、3D-CADデータは社内でのみ活用するより、協力会社等の取引先まで活用範囲を広げることで効果を最大限に発揮できるからです。
例えば、プラスチック製品を3D-CADで設計する場合、(プラスチック製品を製造するために必要となる) 金型の設計に3Dデータを活用することができます。金型業者と3Dデータを共有することで、金型業者とのコミニュケーションが強化されたり、納期短縮やコスト削減につながります。
しかし、金型業者と同じCADを使っているケースは珍しく、自分が使っているCADデータをそのままのファイル形式で渡しても金型業者ではファイルを開くことができません。EXCEL(エクセル)のファイルをWORD(ワード)で開くことが出来ないのと同じです。
そこで、理解しておかなければならないのが 「カーネル」 です。
3D-CADは「カーネル」をコアにCADのコマンド(フィーチャーの作成機能)や個別の機能(アプリケーション)がプログラミングされています。
カーネルは以下の2種類に大別されます。
・市販のカーネル
・独自のカーネル
市販のカーネル
市販のカーネルを使っているCADメーカーが大半です。なぜなら、開発費のコストダウンとなるからです。市販の主なカーネルは以下の3つです。
Parasolid(パラソリッド) | アメリカのUnigraphics Solutions 社が開発しているカーネル |
ACIS(エイシス) ※1 | アメリカのSpatial Technology社が開発しているカーネル |
SIGN BASE(デザインベース) ※2 | 日本のリコーが開発しているカーネル |
機械系CADで多く採用されているカーネルは「パラソリッド」です。
ミッドレンジCADである、SolidWorks、SolidEdge、NX、などがパラソリッドを採用しています。
※1 エイシスは建築用のCADに多く採用されています。
※2 デザインベースはリコーが開発しており「図脳CAD」シリーズで採用されています。
独自のカーネル
独自カーネルはカーネルから開発しなければならないため、開発コストがかかります。しかし、自由にCADの機能を開発することができるため、機能強化を図ることができるといったメリットが出てきます。
従って、機能の高いハイエンド製品では、独自カーネルを採用しているCADが多いです。
独自カーネルを使ったハイエンドCADの代表は、
CATIA と Creo Parametric(旧Pro/Engineer)です。
この2つのCADは機能が高く、自動車、家電、重工業等の多くの分野で活用されています。
以下に、機械用CADが採用しているカーネルをまとめます。
機械用CAD(メカCADのカーネル一覧)
CAD名 |
採用カーネル |
---|---|
CATIA |
独自カーネル |
CreoParametoric (旧Pro/ENGINEER) |
独自カーネル |
NX |
パラソリッド |
Unigraphics (UG) |
パラソリッド |
I-DEAS |
独自カーネル |
SolidWorks |
パラソリッド |
Inventor |
エイシス |
TOPsolid |
パラソリッド |
Solid Edge |
パラソリッド |
上表に示すとおり、機械用CADに限ってもさまざまなカーネルが使用されております。カーネルが異なるCADへデータを渡す場合、そのままのデータでは渡すことができません。このような場合は、中間ファイル形式に変換して渡すことになります。(※ 詳しくは「CADファイルの互換性」にて解説)
カーネルの違いによるCAD形状の違い
「カーネル」が異なると、同じ形状であっても微妙に細部に相違がでてきます。例えば、円柱です。下図のように、CADによって円柱側面の継ぎ目に差異が発生します。このような違いがデータを受け渡しの際の形状不具合の原因の1つとなっています。
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