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引張強度と許容応力と安全率
引張強度
引張強度は、設計者が機械や工業製品を設計する上で、考慮しなければならない機械的特性の一つです。
使用する部品には、最大どのくらいの荷重がかかるのか想定し、その荷重で破損しない材料を選択する必要があります。材料が破損しない目安となる機械的特性が引張強度です。
引張強度について、軟鋼の「応力−ひずみ線図」を使って解説していきます。
なお、軟鋼とは炭素を0.13〜0.20%含む鉄材のことです。よく使われる軟鋼にSS400があります。
下図は、軟鋼の試験片を上下方向に引っ張ったときの応力とひずみ(歪)の関係図を示します。描かれる線は材料によって異なり、その材料の機械的特性を表します。
材料に力を加えていくと、上下方向に伸びて変形し最後は破断します。
材料は図の2番目の黒丸の位置である「弾性限度」までは、加えた荷重を止めると、材料が伸びていても元の長さにちゃんと戻ります。しかし、弾性限度を超えた場合は、元に戻ることができません。従って、設計する場合は、この弾性限度内に収まるひずみ量となるように設計します。
そして、さらに荷重を加えていくと、降伏点に達します。
降伏点に達したあとは、材料に亀裂が入り、一旦荷重が抜けます。そして、下降伏点に至ります。
その後、さらに荷重がかかり最大の応力を迎えます。
最大の応力がかかった状態を 「引張強度」 といいます。
従って、引張強度はその材料が持つ、限界の強度となります。
下記に主な材料の引張強度を示します。
表.主な材料の引張強度 単位:N/mm2
材料名 | 引張強度 |
炭素鋼(軟鋼) SS400 | 400 |
炭素鋼(硬鋼) S55C | 749 |
ステンレス鋼 SUS304 | 520 |
純アルミ A1050 | 80 |
純チタン TP270 | 270 |
ポロプロピレン PP | 29 〜38 |
ポリスチレン PS | 34.3 〜61.7 |
ポリ塩化ビニル 硬質PVC | 34.3 〜61.7 |
スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル ABS | 16.6 〜61.7 |
許容応力と安全率
設計する上で必ず理解しておかなければならないのが、許容応力と安全率です。
一言で説明すると、「物を安全に使用するための考え方」です。安全率を大きく設定すればするほど、一般的に物は壊れにくくなります。
例えば、下図のように100kgの荷物をロープで釣り上げるとき、断面積が1cm2のロープより、断面積が10cm2のロープの方が切れにくいです。
ロープの断面積を徐々に小さくして、ちょうど1cm2より小さくなったときにロープが切れた場合、ロープ1cm2の安全率は1となります。
安全率1の設計では、ちょっとした外部要因でロープが切れてしまいますので非常に危険な設計です。ロープを安全に使うためには、安全率を確保する必要があります。安全率は大きければ大きいほど、安全に使うことができます。
但し、安全率を大きくし過ぎると、材料費が高くなります。設計はできるだけ少ない材料費で、壊れにくいものを作る必要があります。では、どのくらいの安全率に設定するのが良いのでしょうか?
安全率は下表に示すとおり、材料や使用目的別に目安があります。
安全率の例
材料 |
静荷重 |
繰り返し荷重(片振) |
繰り返し荷重(両振) |
衝撃荷重 |
鋳鉄 |
4 |
6 |
10 |
15 |
軟鋼 |
3 |
5 |
8 |
12 |
鋳鋼 |
3 |
6 |
8 |
15 |
銅 |
5 |
6 |
9 |
15 |
木材 |
7 |
10 |
15 |
20 |
これらの目安を参考にして、過去の実績や経験的な観点から安全率を設定します。
安全率を設定するときは、荷重の種類によって変える必要があります。
一定の荷重より、繰り返しの動的な荷重の方が安全率を大きくする必要があります。また衝撃の荷重がかかる場合は、さらに安全率を大きくします。
さらに材料にはバラツキがありますので、バラツキの大きな材料を使う時は、安全率に少し余裕を持たせる必要もでてきます。一般的に工業製品や機械の場合は、過去の実績や社内規定などを基準に安全率が決定されます。
安全率は下記の式で求めることができます。
安全率 = 基準強さ/許容応力
基準強さとはその材料の破損の限界を表す応力で「引張強度」や「降伏強度」などを用います。許容応力とは、許容できる応力、つまり、使用する際にかけても良い応力の最大値のことです。
軟鋼を例として、応力ーひずみ(歪)線図でこれを説明すると、下図のようになります。
例えば、SS400(軟鋼)という金属材料の引張強度は 400 N/mm2 です。
安全率を 4 としたとき、の許容応力を求めます。
軟鋼の許容応力=基準強さ÷安全率=400/4 =100 N/mm2 となります。
尚、最近では軟鋼などのように降伏する材料の場合、基準強さを引張強度ではなく、降伏強度にすることが一般的になっているようです。
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