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クリープと疲労による破壊
クリープとは
クリープ(creep)とは、高温下において、物体に一定の荷重(応力)を加えることで、時間とともに物体が変形していく現象のことです。
通常、一定の荷重を加えた場合、それ以上変形しないところで物体の変形が止まりますが、高温下でクリープが発生すると、物体は時間とともにさらにじわじわと変形していきます。
(なお、プラスチックの場合は、常温でのクリープの現象がみられ、「コールドフロー」といいます。)
以下は、ある高温下で物体に力をかけた際の伸びを示したグラフです。
時間が経過するに連れて、物体が変形していく様子を表しています。
グラフに示すように、クリープは大きく3つの段階に分かれます。
第一次段階では、急速に変形が起こり、第二段階では、時間の経過と共に一定量の変形で増加していきます。この時の直線の傾きをクリープ率といいます。第三段階では再度、急速な変形を示し、最後は破断します。
なお、荷重が低いと上図の点線のラインのように伸びは増加せず一定のラインを描きます。この破断に至らない限界の荷重のときの最大応力をクリープ限度といいます。
従って、高温下で使用される製品を設計する場合、クリープの考慮が必要となります。(加わる荷重が十分に小さいとクリープは発生しないため、設計で考慮する必要はありません。)
例えば、ボルトによって締結される部品では、クリープでボルトが緩むことがあります。この緩みによって締結力が不足し、機能を果たせなかったり、最悪の場合は破損に至ったりする危険性が出てきます。そのため、高温下で使用する部品の場合、クリープの発生有無を事前に検証しておく必要が出てきます。
疲労とは
以前に、ジェットコースターの車輪を支える軸のネジが破損して、脱線した事故が過去に発生したというニュースことがありました。原因はボルトの疲労による破壊です。
ボルトが繰り返しの荷重を受けることで疲労が発生し破壊します。受ける荷重がどんなに小さくても破損することがあります。この現象を疲労といい、疲労が原因で起こる破壊を疲労破壊といいます。
人間も同じように繰り返しの荷重で骨が破壊することがあります。疲労骨折です。
金属などのように非常に強い材料であっても骨と同様に疲労します。
通常の使用では破壊しないものが、繰り返し荷重を受けることで破壊することがあるため、設計する際は注意が必要です。疲労破壊は、「荷重(応力)の大きさ」や「繰り返しの数」によって破壊したり、破壊しなかったりします。
以下は、「応力とひずみ」で解説した軟鋼の「応力ひずみ線図」です。
通常、設計する際は、上図の水色で示した弾性限度や比例限度の範囲に応力が収まるように設計を行います。しかし、繰り返し荷重を受けた場合、この範囲で設計されていたとしても破損することがあります。
応力がある一定以下になっていれば、どんなに繰り返し荷重を加えても疲労破壊を発生させません。その限界となる応力値のことを疲労限度といいます。
繰り返し荷重を受ける部品を設計する場合、疲労限度以下になるようにします。疲労による破壊は2つの要因があります。それは、繰り返し応力 と 繰り返し回数 です。
この2つの要因を用いて材料の疲労の目安を表すのがSN線図(Stress Number of cycle)です。縦軸に繰り返し応力、横軸に繰り返し回数をとります。以下の図のようになります。
赤いラインでは、繰り返しの応力の値を下げていくと、繰り返しの回数が増加していきます。加わる応力が低いと、繰り返し応力に強くなるということです。
ある一定の応力値(赤いラインの水平になっている部分)になると、何回でも繰り返し応力に耐えることができるようになります。これが先ほど説明した疲労限度です。
疲労限度は軟鋼などの材料では存在しますが、アルミ等の非鉄金属では疲労限度がありません。このような材料の場合は、十分な繰り返し数に耐えうる応力を疲労限度とみなし設計を行います。
以上、クリープと疲労について解説しました。自動車や機械設備など振動が加わる機械部品は、繰り返し荷重を受けることが多いので、応力分布を均一にし、応力集中をできるだけ無くした設計が重要になってきます。
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