
静止流体から管内や物体周りの流体、そして流体の測定方法に至るまで、流体力学の基礎が理解できる!流速、流量、流線、剥離などの概念をじっくりと掘り下げ、実際の流体の問題解決に役立つ知識が身につく。
ベルヌーイの定理
1738年スイスの物理学者であるダニエル・ベルヌーイ氏(Daniel Bernoulli)は、ベルヌーイの定理を発見しました。
ベルヌーイの定理は以下の式となります。
この式を簡単に説明すると、
「流体の速度が増加すると圧力が下がること」 を示しています。
これを身近な例でご説明いたします。例えば、A4の用紙を図のように持って、息を吐きかけると、どちらに用紙が移動するでしょうか。吹いたので風に押されて左に移動しそうですが、吹いた側に移動します。
電車が駅のホームを通過したとき、電車に吸い寄せられそうになるのも同じ原理からです。つまり、速度が速いと圧力が下がるからなのです。
ここで圧力には、「静圧」と「動圧」があります。
動圧とは、流れによって生じる力です。例えば、人が風を受けるときの力です。このとき、風の速度が速くなればなるほど、力は大きくなります。
厳密には、このとき、受けている力は「動圧」+「静圧」となります。これを次に説明します。
管路を流れる流体で、動圧は次の図ようになります。
動圧は流れ方向に対して、平行に細い管を取り付けることで測定した圧力から「静圧」と呼ばれる圧力を差し引いた値となります。
静圧は流れ方向に対して、直角に空けた細い管の先に圧力計を取り付けることで測定することができます。
そして、静圧と動圧を足した圧力を「全圧」と呼びます。
同様に、下流の細い管路でも動圧と静圧を測定します。
前章で解説した「連続の式」から、下流の細い管路の流速は、太い管路の流速より早くなります。
冒頭で説明した人が風を受けるときの力のお話しを思い出してください。風の速度が速くなればなるほど、動圧は大きくなりましたね。したがって、細い管路の動圧は、太い管路の動圧より、大きくなります。
細い管路では、動圧は大きくなりましたが、その分静圧は小さくなっています。これは、「管路の断面積が変化しても全ての位置で全圧は等しくなる」からです。
ここで、ベルヌーイの定理を理解して頂くために、エネルギーについて少し解説します。
エネルギーには様々な形態があります。
- 位置エネルギー
- 運動エネルギー
- 弾性エネルギー
- 熱エネルギー
- 電気エネルギー
などなど・・・
エネルギーとは、言い換えると 「仕事をする能力」 のことであり、これらのエネルギーは、互いに変換することが可能です。そして、変換前後のエネルギーの総和は等しくなります。
これを「エネルギー保存の法則」といいます。
例えば、高さHの位置からm[kg]のボールを落下させるケースで考えてみましょう。
まず、平面Aの位置では、ボールに重力が加わっているため、重力によって仕事をすることができるエネルギーである「位置エネルギー」が存在します。位置エネルギー(U)は、mgh となります。
次に、基準平面Oまでボールを自由落下させた際、ボールが速度vで運動したとしましょう。このとき、最初に持っていた位置エネルギーが運動エネルギーに変換されることとなります。
そして、運動エネルギーは、
となります。
つまり、ボールが持っていた位置エネルギーは、落下するにつれて減少し、基準平面に達したときの位置エネルギーは完全にゼロとなり、反対に運動エネルギーが増加するのです。
これがエネルギー保存の法則です。
平面Aにおけるエネルギーの総和 | 「運動エネルギー」+「位置エネルギー」=0+mgh |
基準平面Oにおけるエネルギーの総和 | 「運動エネルギー」+「位置エネルギー」=1/2 mv^2+0 |
平面Aにおけるエネルギーの総和と基準平面Oにおけるエネルギーの総和は等しくなるため、
となるのです。
次に、このエネルギー保存の法則を、先ほどの管路の流れに適応してみましょう。
太い管路における流体の 速度v1 [m/s]、圧力P1 [Pa]、高さZ1 [m]とし、
細い管路における流体の 速度v2 [m/s]、圧力P2 [Pa]、高さZ2 [m] としたとき、
エネルギーの総和は、太い管路と細い管路で等しくなります。
太い管路におけるエネルギーの総和は、
「圧力エネルギー」+「速度エネルギー」+「位置エネルギー」となり
細い管路におけるエネルギーの総和は、同様に
「圧力エネルギー」+「速度エネルギー」+「位置エネルギー」となり
つまり、
上式を密度で割ると、
そして、水の持つエネルギーを水柱の高さ[m]に置き換えたものを「水頭」といい、管路の流れを水頭で表すと次の図のようになります。
以上がベルヌーイの定理となりますが、この式が成り立つのは、非粘性で、非圧縮性の理想流体です。理想流体は非圧縮性であるため、密度は一定となります。
また、管内に摩擦はなく、時間変化のない定常流である必要があります。
前ページ で示した「連続の式」とベルヌーイの式は理想流体の流れを把握する際、非常に便利な式です。
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