静止流体から管内や物体周りの流体、そして流体の測定方法に至るまで、流体力学の基礎が理解できる!流速、流量、流線、剥離などの概念をじっくりと掘り下げ、実際の流体の問題解決に役立つ知識が身につく。
物体周りの流れ
抗力
流体中にある物体と流体との間に相対速度があるとき、その物体には流体からの力が作用します。この力のうち、相対速度に平行な方向の成分を「抗力」と言います。
抗力は、その発生原因によって5種類に分類することができます。
摩擦抗力
新幹線やタンカーなどのように流れ方向に長い物体において、この摩擦抗力が卓越しています。
摩擦抗力は、物体表面に流れており、反対方向に作用している摩擦力を全表面にわたって積分したものを表しています。
形状抗力
一般に、流れ方向にあまり長くない物体の時に支配的となっています。この抗力は物体の形状に依存するため、形状抗力と呼ばれています。
誘導抗力
例えば、航空機の後流に生じる一対の縦渦の発生に伴う抗力のことを誘導抗力といいます。この縦渦を発生させるためにエネルギー損失があり、物体の抗力とみなされるからです。
造波抗力
圧縮性流体の中で、衝撃波が形成されたり、船の進行に伴い、水面に波が生じるような場合には、この波を形成するために、エネルギー損失があります。これによって、抗力となり、これを造波抗力といいます。
干渉抗力
2つの物体の相互作用によって生じた効力を干渉抗力といいます。
物体の抗力はこれらのうち複数から構成されるのです。抗力はエネルギー損失になるため、設計を行う上では抗力を低減することが求められます。
その際、どの種類の抗力が支配的であるかを考え、その抗力を減少させるように設計することが非常に重要となるのです。
最も分かりやすい例として自動車を挙げてみましょう。普通自動車が走行時、自動車に作用する流体抵抗は、形状抗力が多くを示していたとすると、自動車の形状を修正して、形状抗力を低減させることが最も有効であるといえます。そのため、流線形にしたり、角を丸めたり、などの対策がとられるのです。
揚力
揚力は相対速度に垂直な方向の成分のこといいます。揚力は航空機の浮上力、回転機械の回転力に利用されるなど、工業上、非常に重要な力です。
円柱まわりの流れ
物体のまわりの流れの典型的な例として、一様流中に置かれた円柱まわりの流れがあります。
ここでも、前章で説明したレイノルズ数が重要なパラメータとなります。ここでν:流体の動粘度、U:一様流速、d:円柱直径とすると、
となります。
レイノルズ数(Re)が6以下の場合は、円柱に付着した流れになります。6以上40以下のレイノルズ数では、「双子渦」が形成されます。レイノルズ数が40以上になると「カルマン渦」が発生します。このカルマン渦は、工業上、機械に悪影響を及ぼす場合と、有効利用される場合の両面があります。
レイノルズ数 |
流れの状態 |
図 |
---|---|---|
Re<6 |
円柱に付着した流れ | |
6<Re<40 |
双子渦 | |
40<Re |
カルマン渦 |
悪影響の例として、橋の崩壊があります。カルマン渦の放出と橋構造の固有振動数が一致した場合、ねじれ曲げモーメントの自励振動を起こし、破壊に至ることもあります。そのため、設計する場合は、渦放出周波数が構造物の固有振動数に一致しないように注意が必要です。
有効利用の場合は、計測機器に利用されることが挙げられます。カルマン渦の周波数を計測することで、流速や流量を求めることができるのです。
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